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未来へと続く道(元就×清正)

突然、元就公から手紙が届いた。
いつもなら政の事にしても、私用にしてもギン千代曰く冗長な文面が当たり前なのだが、


『会いたい、清正』


一言だけそう書かれていた。
なんとなく、なんとなくだけど言い知れぬ不安が過ぎって俺はすぐに安芸へと向かった。

















「やぁ清正」
足の踏み場もない程に積み上げられた本で溢れかえったいつもの部屋、
頼りなげにふにゃりと笑ういつもの笑顔。
だけどいつもと違っていたのは、そこに居た元就公は床に伏せていた事だった。

「元就公、その…」
「突然文を出して悪かったね」
「いえ、それは構わないんですが…」

何を言うでもなく元就公はただ俺を見て笑っていた。
しかしその笑顔はどこか寂しそうにも見えた。

「…あの文なんですが」
「そのままの意味だよ」
「会いたいって…」
「だからそのままの意味で君に会いたかったんだよ」
「……」
「もっと近くにおいで清正」
そう手招きされて俺は元就公の傍に近寄った。
鼻をくすぐる香の匂いがする。
それはとても懐かしくて温かくて安心する元就公の匂いだ。
「清正、もっと近くに。顔を良く見せて?」
元就公は手を伸ばし俺の頬にそっと触れた。
温かい。
「嗚呼、君の顔をこんな近くで見たのは初めてかな?」
「…元就公…」
「とても頼もしい顔つきをしている。君が守る豊臣は今後も安泰だね」
尊敬する元就公にそんな言葉を掛けてもらえるのは嬉しいはずなのに。
今は何故か無性に泣きたくなった。
「辛そうな顔してるよ?大丈夫かい?」
「…はい」



それからどのくらいの時間が経っただろうか。
元就公は只ずっと傍で話をしてくれた。
大好きな歴史の事、政の事、兵法の事。
何を話している時も元就公は楽しそうだった。


「ねぇ清正」
「はい」
「今日は来てくれてありがとう」
「いえ…」
「さぁもう国にお帰り、遅くなっては家臣達が心配するよ」
促されて部屋を後にしようとした俺に一言元就公は言った。


「        」


俺は振り返る事をせず、元就公の屋敷を後にした。









それから数日の事、元就公は静かに息を引き取ったらしい。
最期の時まで大好きな本を読み、幸せそうに笑って 息子達に見送られて逝ったと聞いた。

なんとなくだけど、あの文が届いた時から予感はしていた。
元就公も俺が察してるのを知っていたのだろう。
だからこそ呼んだ理由を口にしなかったのかもしれない。
そんな所が最期まで元就公らしいと思う。








『最期に君に会えてよかったよ』





またいつか貴方に逢えたその時は変わらない笑顔を見せてくださいね。



終。




今日は元就追悼記念日なので就清にしてみました。
なんだか久しぶり。
誰得!?な絡みですが私は好きです。
別館の方ではむねなりも更新…したいけど間に合うかな??



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